うちの柴犬、「柴犬だから頑固」じゃなかった

このTEDを一言で
「ラブラドールは優しい」「柴犬は頑固」——犬種ごとの性格イメージ、信じてた。でも2022年、MIT・ハーバードの研究チームが2,000匹以上の犬と20万件以上の行動調査を分析した。結果は衝撃的だった。
講演者について
Kathleen Morrill Pirovich(キャスリーン・モリル・ピロヴィッチ)
マサチューセッツ工科大学・ハーバード大学ブロード研究所の研究者。犬の遺伝学を専門とし、2022年に Science 誌に発表された大規模研究の主著者。2,000匹以上の犬のDNAと20万件以上の行動調査を分析した。
かつて「キッチンで働く犬」がいた
講演は意外な話から始まる。
19世紀半ばまで、イギリスには「ターンスピット・ドッグ」という犬種がいた。キッチンで肉を焼く回転串を回すために、車輪の中を走り続ける犬だ。
技術の進歩で役目を終え、この犬種は絶滅した。
でも考えてみれば、「串を回すためだけに存在する犬」がいたということ自体が驚きだ。人間は犬をそこまで「目的別」に作り変えてきた。
犬は地球上で最もサイズが多様な動物
犬の多様性は驚異的だ。
- ポメラニアン:約2kg
- マスティフ:約100kg
同じ種なのに、50倍のサイズ差がある。これほどサイズにバラつきがある哺乳類は他にいない。
なぜこうなったのか。
1万5000年の歴史
犬は約1万5000年前、古代のオオカミから分かれた。
「犬は、最初に家畜化された動物。他のどの動物よりも数千年も早い」
牛や羊よりずっと前から、人間のそばにいた。
最初は自然と人間の近くにいたオオカミが、徐々に人間に慣れていった。そして人間は、役に立つ犬を選んで繁殖させるようになった。
ビクトリア時代に「犬種」が生まれた
犬の多様化が加速したのは、ビクトリア時代のイギリス。
この時代に「犬種」という概念が生まれ、見た目や能力の基準が定められた。「純血種」という考え方もこの頃から。
研究によると、現在の犬種は10の大きなグループに分けられる。そしてそのグループは、歴史的な「役割」と一致している。
- 牧羊犬グループ
- 狩猟犬グループ
- 番犬グループ
- など
人間が「目的」に合わせて犬を作り変えてきた結果だ。
「犬種=性格」は9%しか当たらない
ここからが研究の核心。
2022年、MIT・ハーバードのブロード研究所が大規模な研究を行った。
- 2,000匹以上の犬のDNAを解析
- 20万件以上の飼い主による行動調査
- Science誌に論文発表
結果は衝撃的だった。
「犬の性格のうち、犬種で説明できるのはたった9%」
遺伝子全体で見ても、性格の25%未満しか説明できない。
残りの75%以上は、育った環境、経験、個体差で決まる。
講演者は言う。
「犬種だけで、その犬の性格を予測するのはかなり難しい」
つまり「ゴールデンレトリバーだから優しい」「柴犬だから頑固」という予測は、75%以上の確率で外れる。
犬種ごとの「傾向」はある
とはいえ、完全にランダムというわけでもない。
- ボーダーコリー:人間の指示に反応しやすい傾向
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ:水を怖がらない傾向
- ハスキー、マラミュート:吠えるより遠吠えする傾向
これらは統計的に見られる傾向。でも「傾向」と「確定」は違う。
同じ犬種でも、おとなしい子もいれば活発な子もいる。
明日から使えるアクション
犬を飼うとき、犬種だけで性格を決めつけない。個体差のほうが大きい
「この犬種だから〇〇なはず」という先入観を手放す
目の前の犬を、犬種ではなく「その子」として見る
感想
正直、犬種で性格がわかると思い込んでいた。ゴールデンレトリバーは優しい、チワワは気が強い、柴犬は頑固。そういうイメージで犬を見ていた。
でも2,000匹以上のDNA解析と20万件の行動調査という大規模研究で「9%しか当たらない」と出た。科学的に否定された。
「ターンスピット・ドッグ」の話が一番衝撃だった。串を回すためだけに存在した犬。技術が進歩したら用済みになって絶滅した。人間は犬をそこまで「道具」として作り変えてきた。その歴史を考えると、犬種というのは人間の都合で作られたカテゴリーに過ぎない。
犬を飼うとき、「この犬種だから〇〇なはず」と思って飼い始めると、期待と違ったときにがっかりする。でも75%以上は環境や経験で決まるなら、「育て方次第」とも言える。
目の前の犬を「ラブラドール」としてではなく、「この子」として見る。その視点の転換が必要だと思った。