息子にFortniteで守られて気づいたこと

このTEDを一言で
「ゲームばっかりして!」と怒っていた教育者が、息子たちと一緒にFortniteをプレイしてみた。そしたら、普段は親に守られる側の子どもたちが、ゲームの中では自分を守り、助けてくれた。この経験がきっかけで、彼女はeスポーツを高校の公式活動にする運動を始めた。
講演者について
Hannah Boquet(ハンナ・ボケ)
南ダコタ州の教育者、eスポーツコーチ。2024年に南ダコタ州が高校活動としてeスポーツを公式認定する立役者となった。TED 2024で講演。
「ゲームばっかりして!」の後悔
講演者には3人の息子がいる。
毎日何時間もゲームをしている。画面に向かって叫んでいる。宿題もせずにコントローラーを握っている。
「ゲームばっかりして!」と怒ってきた。ゲームは時間の無駄だと思っていた。
でもある日、息子たちに誘われてFortniteを一緒にプレイすることにした。
Fortniteで見えた、息子たちの一面
講演者が初めてFortniteをプレイしたとき、何も分からなかった。
着陸地点から動けない。敵に撃たれる。何が起きているか分からないまま倒された。
そのとき、12歳の息子が構造物を建てて自分を守ってくれた。
「Mom, get behind me!」(ママ、僕の後ろに隠れて!)
息子は壁を建て、階段を作り、敵の弾から母親を守った。
そして別の息子がバナナのコスチュームで現れて、回復アイテムをくれた。
普段は「ゲームばっかりして」と思っていた子どもたちが、ゲームの中ではチームメイトを守り、助ける側だった。
講演者はこの瞬間を「role reversal(役割の逆転)」と呼んでいる。
普段は親が子どもを守る。でもゲームの中では、子どもが親を守る。子どもは「頼られる側」になる。「教える側」になる。
これは子どもにとって、自己効力感を育てる貴重な体験だ。
「仕事は待つ。今は世界を救っている」
講演者の父親は厳格で仕事熱心な人だった。
でも一度だけ、Haloというゲームを一緒にプレイしたことがある。Haloはエイリアンから地球を守るシューティングゲームだ。
プレイ中、たぶん「そろそろ仕事しなきゃ」みたいな空気になったとき、父が言った。
「仕事は待つ。今は世界を救っている」
ゲームの世界に入り込んで、冗談を言う父親。普段は真面目で厳格な人が見せた、遊び心のある一面だった。
ニュージーランドの叔父と姪
講演者の叔父Amosはニュージーランドに住んでいる。
物理的な距離があって、姪や甥との関係は薄かった。でもFortniteを始めてから、一緒にプレイするようになった。
ゲームが、距離を超えた接続を作った。
なぜeスポーツを学校活動にしたのか
講演者はこの体験をきっかけに、eスポーツを学校の公式活動にする運動を始めた。
なぜか。
「The kids who don’t fit anywhere else finally have a place.」 (どこにも居場所がなかった子どもたちに、やっと居場所ができる)
運動が苦手な子。内向的な子。障害がある子。従来のスポーツに参加できなかった子どもたちが、eスポーツなら参加できる。
そしてeスポーツで身につくのは、ゲームの腕だけじゃない。
- リーダーシップ:チームを率いて勝利に導く
- チームワーク:役割分担して協力する
- コミュニケーション:ボイスチャットで情報共有する
- 戦略立案:敵の動きを予測して対策を立てる
- 感情管理:負けても冷静さを保つ
従来のスポーツと同じスキルが、ゲームでも身につく。
2024年、南ダコタ州は高校活動としてeスポーツを公式認定した。講演者はその立役者のひとりだ。
親に伝えたいこと
講演者は親に3つのことを伝えている。
1. 「一緒にやろう」と言う
ゲームを禁止するんじゃなく、一緒にやってみる。下手でもいい。子どもに教えてもらう側になる。
2. 子どもがどう振る舞うか観察する
ゲームの中で、子どもはどう行動しているか。チームメイトを助けているか。リーダーシップを発揮しているか。怒りをコントロールできているか。
ゲームは「子どもの本性が出る場所」でもある。
3. ゲームを「会話のきっかけ」にする
「今日学校どうだった?」と聞いても「別に」としか返ってこない。でも「今日のFortniteどうだった?」なら話してくれるかもしれない。
子どもが興味を持っていることに興味を持つ。それが会話の入り口になる。
明日から使えるアクション
今日、子どもに「一緒にやってみていい?」と聞いてみる
下手でもいい。子どもに教えてもらう側になる
ゲームの中で子どもがどう振る舞うか観察する。リーダーシップ、協調性、感情管理
「今日のゲームどうだった?」を会話のきっかけにする
感想
「ゲームばっかりして」と言いたくなる気持ちは分かる。自分も子どもの頃、親に同じことを言われた。
でもこの講演を聞いて、視点が変わった。
息子に守られる話が一番刺さった。普段は親が子どもを守る。でもゲームの中では逆転する。子どもは「頼られる側」になる。「教える側」になる。
これって、子どもにとってすごく大事な体験なんじゃないか。
「どこにも居場所がなかった子どもたちに、やっと居場所ができる」という言葉も印象的だった。運動が苦手で部活に入れなかった子が、eスポーツでチームワークを学ぶ。内向的で友達が少なかった子が、オンラインで仲間を見つける。
ゲームは「悪いもの」じゃない。使い方次第で、子どもの成長を助けるツールになる。
「仕事は待つ。今は世界を救っている」という父親のセリフが一番好きだった。子どもの世界に入り込んで、一緒に楽しむ。その姿勢が、信頼関係を作る。