犬との「本当のコミュニケーション」を世界チャンピオンに学ぶ

このTEDを一言で
犬に「座れ」と言葉で命令するのは、犬にとって一番不自然なコミュニケーション。犬が生まれつき理解できるのは「動き」「位置」「目線」。世界チャンピオンは、声が出なくても両腕が使えなくても、犬と走れると言う。
講演者について
Jennifer Crank(ジェニファー・クランク)
6歳からドッグアジリティ競技を始め、現在はプロとして活動。2022年、ウェストミンスター・ケネルクラブのマスターズアジリティ選手権で、シェルティとして史上初の総合優勝を果たした。
3つのポイント
1. 犬にとって「声」と「手の動き」は一番不自然
人間は声と手でコミュニケーションを取る。だから犬にも「座れ」「待て」と言葉で命令する。
でも犬にとって、声と手は一番不自然なコミュニケーション手段。生まれたばかりの子犬に「座れ」と言っても、何のことかわからない。
犬が生まれつき理解できるのは:
- 動き(モーション)
- 位置(ロケーション)
- 肩の向き
- 目線(アイコンタクト)
8週間の子犬を地面に置いて走り出すと、子犬は追いかけてくる。止まると、子犬も止まる。これが「動き」によるコミュニケーション。教えなくても、本能で理解している。
講演者は言う。「声が出なくても、両腕が使えなくても、私は犬とアジリティコースを走れる。なぜなら、犬にとって一番不自然な『声』と『手』に頼っていないから」
2. 矛盾したシグナルを出すと、犬は本能に従う
ドッグアジリティでは、犬が全速力で走る。コースは毎回違う。6.4京(けい)通りのパターンがある。人間は8分で覚えて、ミスなく誘導しなければならない。
犬は0.01秒単位で判断している。立ち止まって「どっちに行くの?」と聞く余裕はない。
だから、シグナルは明確でなければならない。
講演者はデモで、体は左を向きながら「右!」と叫んだ。犬は体の動きに従って左に行った。
矛盾したシグナルを出すと、犬は本能的に理解しやすい方を選ぶ。声より、動き。
3. 「伝える」ではなく「理解する」がコミュニケーション
講演者はトレーニングをほぼ毎回録画する。ミスがあったら見返す。
ほとんどの場合、原因は自分だった。シグナルが遅かった、曖昧だった、犬を混乱させた。
「彼女(犬)が『そうそう、いつもあなたのせい』って顔で見てくるんです」
アジリティはチームスポーツ。犬が運転手で、人間はナビゲーター。高速道路を時速110キロで走っているときに「あ、この出口だ」と言っても、急に車線変更はできない。早すぎず、遅すぎず、的確なタイミングで伝える。
大事なのは「犬に伝える」ではなく「犬を理解する」こと。
講演者の犬「サプライズ」は、同じドリルを100回やっても平気。でも「ハイファイブ」は完璧主義で、ミスが続くと不安になって遅くなる。
それぞれの性格に合わせて、トレーニングを調整する。「与えられた犬をトレーニングしろ」と講演者は言う。
明日から使えるアクション
犬に命令するとき、声だけでなく「動き」で示してみる。走り出せば犬は追いかける、止まれば止まる
犬が言うことを聞かないとき「犬が悪い」ではなく「自分のシグナルが曖昧だったか?」と考える
人間関係にも応用できる。「相手の言語で話しているか?」「明確に伝えているか?」「理解しようとしているか、コントロールしようとしているか?」
感想
「声が出なくても両腕が使えなくても走れる」という言葉がインパクトあった。人間は声と手でコミュニケーションするから、犬にもそれを押し付ける。でも犬にとっては不自然。
最後の「これは犬だけの話じゃない」というメッセージも良かった。子育て、チームマネジメント、夫婦関係——「相手の言語で話しているか?」「理解しようとしているか、コントロールしようとしているか?」。犬から学ぶコミュニケーションの本質。