キャリア最悪の日、なぜかマンホールの蓋に感動した

このTEDを一言で
最悪の1日の帰り道、ふとマンホールの蓋を見て「丸いのは安全のためか、すごいな」と思った。その瞬間、自分が「appreciation(感謝・評価)中毒」だと気づいた。この習慣が、人生を驚くほど楽しくする。
講演者について
Timm Chiusano(ティム・キウサノ)
元企業マネージャー(270人のチームを管理)。48歳でSNSを始め、日常を「appreciation」の視点で発信したところ、150万人のフォロワーを獲得。「大人になるのが怖くなくなった」というコメントが多数寄せられている。
講演のハイライト:最悪の日にマンホールの蓋に感動した話
キャリア最悪の日
ティムは当時、270人のチームを管理するマネージャーだった。
「その日は、私のキャリアで『ワースト3』に入る最悪の日でした。270人全員が、同じ日に、同じタイミングでメルトダウンしたんです」
8時間の険悪な会議。誰も譲らない。誰も聞かない。そして彼だけが知っている秘密があった——春にはレイオフが控えている。
「しかも自分の毎日のスケジュールは、朝4時から夜10時まで、15分刻みでびっしり埋まっている。狂気のスケジュールです」
帰り道、また遅刻だ、と思いながら地下鉄を降りる。スマホを見ると上司から「明日9時に来い。覚悟しとけ」というメール。
「正確なメールの文面は『Be in the office at 9am tomorrow morning, and be prepared for that meeting to suck.(明日朝9時にオフィスに来い。そしてその会議がクソになる覚悟をしておけ)』でした」
マンホールの蓋
その最悪の瞬間、ふとマンホールの蓋が目に入った。
「マンホールの蓋って丸いのは、四角より安全だからだよな。四角だと対角線で落ちちゃうから。しかもこれ、インドで作られてるらしい。ニューヨークの道にあるのに。面白いな、あとで調べよう」
そして気づいた。
「……待って、なんで今そんなこと考えてるんだ?キャリア最悪の日の帰り道で、上司から『覚悟しとけ』ってメールが来てるのに。なぜマンホールの蓋に感動してるんだ?」
これが「appreciation中毒」に気づいた瞬間だった。
appreciationと「感謝」の違い
ティムは明確に区別する。
gratitude(感謝)
「何かをもらったから、ありがとう」という取引的なもの。プレゼントをもらった、助けてもらった、だから感謝する。
appreciation(アプリシエーション)
ただ「いいな」と気づくこと。何ももらわなくても、存在そのものに価値を見出すこと。
「ラトガース大学の教授の研究によると、appreciationは『気質』になりうる。そして感謝は、appreciationを構成する8つの要素のうちの1つにすぎない」
つまり、感謝はappreciationの一部でしかない。
48歳でSNSを始めて150万フォロワー
ティムはInstagramで「be addicted to appreciation(appreciation中毒になれ)」と投稿し始めた。最初は友人や家族に向けてだった。
そして毎日、自分の企業マネージャー生活をvlogにして投稿した。朝4時から夜10時まで、15分刻みでスケジュールが埋まっている狂気の日常。
「48歳でSNSを始めて、150万人のフォロワーがついた。一番多いコメントは『You make growing up less scary.(あなたのおかげで大人になるのが怖くなくなった)』でした」
appreciationの具体例
講演でティムが挙げた例:
電球
「今夜、寝る前に電球について考えてみてください。電球がどれだけ進歩してきたか。照明が気分にどう影響するか。部屋を明るくしてくれること。『すごいな』と一瞬思うだけでいい」
3日連続の雨
「3日連続で雨?『貯水池にはいいかも』と考えられる」
職場の天敵
「職場に苦手な人がいる?『この人を理解してみよう。相手の立場に立てば、関係で優位に立てる』と考えられる」
「あなたの人生だったら、もっとうまくやれた」とは言えない
人をappreciateする最も簡単な方法がある。
隣の席を取られた。列に割り込まれた。イラっとする。
でもこう考えてみる。
「この人の人生を、生まれてから今日まで全部引き受けて、自分ならもっとうまくやれたか?」
答えはNO。絶対にそうは言えない。
「相手の家庭環境、教育、経験、トラウマ——全部を引き受けて、自分ならもっといい人間になれたか?言えないですよね。それがわかれば、相手をappreciateできる」
appreciationがもたらすもの
ティムの締めくくり:
「Appreciationは、あなたを一貫して幸せにします。より多くの『すごいな』を感じ、より今この瞬間にいられるようになります」
状況は変わらない。最悪の日は最悪の日のまま。でも、見え方が変わる。マンホールの蓋に感動できる脳になる。
明日から使えるアクション
今夜、寝る前に「電球」について考えてみる。電球がどれだけ進歩してきたか、照明が気分にどう影響するか。「すごいな」と一瞬思うだけでいい
イラっとする人がいたら「この人の人生、自分ならもっとうまくやれたか?」と問う。答えはNOだから、少し優しくなれる
日常の「当たり前」に「いいな」と気づく練習をする。マンホールでも、信号でも、電車の時刻表でも、なんでもいい
嫌なことがあったとき、別の視点を探す。雨なら「貯水池にいい」、苦手な人なら「この人を理解すれば優位に立てる」
感想
「感謝」と「appreciation」の違いが面白かった。感謝は「もらったから返す」という取引。appreciationは「ただ気づく」こと。何ももらわなくても、存在に価値を見出す。
最悪の日にマンホールの蓋に感動できるって、ある意味最強のスキルだと思う。状況は変わらなくても、見え方が変わる。
「この人の人生を全部引き受けて、自分ならもっとうまくやれたか?」という問いも使えそう。答えは絶対NOだから、誰に対しても少し優しくなれる。