倒産寸前の会社を救った「たった1つの問い」

このTEDを一言で
5000万ドルの赤字、20%の店舗が不採算、倒産寸前。普通ならコスト削減や店舗閉鎖をやる。でもこのCEOは従業員に「この会社は存在する意味があるか?」と問いかけた。その答えが、株価2000%超の成長につながった。
講演者について
Sharon Price John(シャロン・プライス・ジョン)
Build-A-Bear Workshop CEO。2013年に倒産寸前の同社に就任し、V字回復を実現。株価はAppleやAmazonを超える成長率を記録。
3つのポイント
1. 教科書通りの「再建策」は従業員に響かなかった
Build-A-Bearは、子どもが自分でぬいぐるみを作れる体験型の店。1997年創業で、誕生日やお祝いの定番になっていた。
でも2012年、会社は最悪の状態だった。5000万ドル(約75億円)の赤字。20%の店舗が不採算。リーマンショック後の不況、モールの衰退、デジタル化——8年間もがき続けて、倒産が目前だった。
2013年にCEOに就任したシャロンは、最初に「教科書通りの再建策」を提示した。コスト削減、店舗閉鎖、リストラ。
従業員の反応は**「懐疑的な視線と沈黙」**だった。
彼らは数字の問題をわかっていた。でも「会社の魂を殺す再建」には乗れなかった。
2. 「この会社は存在する意味があるか?」と問いかけた
そこでシャロンは戦略を変えた。従業員にこう聞いた。
「Does it matter if Build-A-Bear exists?」 (Build-A-Bearが存在することに、意味はあるか?)
この問いかけで、空気が変わった。
従業員は自分たちの仕事の意味を語り始めた。子どもたちの笑顔。親子の思い出。ぬいぐるみに願いを込める「ハート・セレモニー」。赤十字への寄付用ぬいぐるみ。
数字では測れない価値があった。そしてそれこそが、会社が存在する理由だった。
新しいミッションが生まれた:「We add a little more heart to life」(人生にちょっとだけハートを加える)
3. 「心」を軸に戦略を再構築したら、すべてが変わった
ミッションが決まると、戦略が見えてきた。
- 出店場所の変更:衰退するモールではなく、観光地、テーマパーク、クルーズ船へ
- デジタル強化:Webの売上を5%未満から15〜20%に
- ターゲット拡大:子どもだけでなく、ティーンや大人にも訴求。大人向けビジネスは2倍の40%に
結果:就任初年度で黒字化。その後、株価は2000%超の成長——AppleやAmazonを上回った。
その後もアクティビスト投資家の攻撃、Brexit、コロナによる全店舗閉鎖と、危機は続いた。でも「心」を軸にした組織は、そのたびに乗り越えた。
明日から使えるアクション
- 「なぜこの会社(仕事)は存在するのか」を問う:数字や効率ではなく、誰のどんな価値につながっているかを言語化する
- 再建や改革のとき、まず「意味」を確認する:コスト削減の前に、「これを失ったら何がなくなるか」を考える
- 「心」をミッションに入れる:Build-A-Bearの「add a little more heart」のように、感情に訴える言葉を使う
感想
「倒産寸前の会社を救う方法」と聞いてコスト削減の話かと思ったら、まったく逆だった。
従業員に「この会社に存在意義はあるか」と聞く。普通のCEOはやらない。「あるに決まってる」と言うか、聞かずに再建を進めるか。でも聞いたからこそ、従業員が当事者になれた。
「心」という言葉がビジネスで出てくると胡散臭く感じることもあるけど、この講演は具体的な数字(株価2000%超)で裏付けられてるから説得力があった。11分の講演なので、気になった方はぜひ。