「勝ち負け思考」の罠から抜け出す方法

このTEDを一言で
ほとんどの人は「自分が勝つか、相手が勝つか」で物事を考える。でもWhole Foods創業者は「自分・相手・社会の3者全員が勝つ」方法があると言う。創業9ヶ月で会社が洪水で壊滅したとき、この哲学が生まれた。
講演者について
John Mackey(ジョン・マッキー)
Whole Foods Market共同創業者。オーガニック・自然食品スーパーを1店舗から売上200億ドル超の企業に育てた。「意識の高い資本主義(Conscious Capitalism)」の提唱者。
3つのポイント
1. 洪水で全部失ったとき、「Win-Win-Win」が生まれた
1981年のメモリアルデー。オースティンを70年で最悪の洪水が襲った。創業9ヶ月のWhole Foods1号店は壊滅。倒産寸前だった。
マッキーが被害を確認しに行くと、すでに従業員、顧客、近所の人たちが片付けを手伝っていた。その後1ヶ月、従業員は無給で働いた。仕入先は掛け売りを延長してくれた。投資家は追加出資した。地元の銀行は融資してくれた。
なぜみんな助けてくれたのか。**「Whole Foodsが生き残れば、自分たちも同時に勝てる」**と知っていたから。
この経験でマッキーは気づいた。ビジネスは利益を出すだけの機械じゃない。ステークホルダー(関係者)のネットワークであり、その関係を大切にする責任がある。
2. 「Win-Win-Win」は3つの視点を同時に考える
普通の交渉は「Win-Lose」——自分が勝てば相手が負ける、というゼロサム思考。「Win-Win」は自分と相手の両方が得する。
マッキーの「Win-Win-Win」はもう一歩進む。**自分・相手・社会(コミュニティ)**の3者全員が得する方法を探す。
具体例が「Whole Trade」プログラム。途上国からの農産物を仕入れるとき、フェアトレードやレインフォレスト・アライアンスと組んで、以下を実現した:
- 農家:市場へのアクセス、適正な賃金
- 地域社会:学校、医療施設、コミュニティセンターの建設資金
- Whole Foods:倫理的な差別化、競争優位
- 顧客:透明性のある買い物
全員が勝っている。
3. 実践には「頭・心・創造性」の3つの転換が必要
① 頭の転換(Mind Shift):狭い自己利益を超えて、相手の視点に立つ。
② 心の転換(Heart Shift):エゴと防衛本能を手放し、共感と傾聴を持つ。
③ 創造性の転換(Creative Shift):全員が得する解決策を想像力で生み出す。
講演で出てきた「Bread and Circus買収」の話がわかりやすい。
1992年、Whole Foodsは競合のBread and Circus(6店舗)を買収しようとした。オーナーは3000万ドルを要求。マッキーの取締役会は2500万ドルしか承認しない。500万ドルの溝があった。
マッキーの解決策:現金と株式を組み合わせる。株価が上がれば、オーナーはもっと儲かる仕組みにした。
最初、オーナーは株のリスクを嫌がった。でもマッキーが「あなたの成功に本気でコミットする」という姿勢(心の転換)を見せたことで、信頼が生まれた。
結果:オーナーは当初の要求を超える3200万ドルを手にした。Whole Foodsは青果・肉・魚介の専門知識を獲得し、売上が1億ドルから200億ドル超に成長する基盤を得た。業界全体も、Whole Foodsの拡大で何万人もの農家やメーカーが成功した。
全員が勝った。
明日から使えるアクション
- 交渉の前に「第3者」を考える:自分と相手だけでなく、チーム、会社、業界、社会にとってどうかを問う
- 「心の転換」を意識する:勝ちたい気持ちを手放し、相手の成功にコミットする姿勢を見せる
- 「どちらか」ではなく「どうすれば両方」を考える:500万ドルの溝を「どちらかが譲る」ではなく「株を使う」で解決したように、創造的な選択肢を探す
感想
「Win-Win」は聞いたことあるけど、「Win-Win-Win」は初めてだった。3つ目の「社会」を入れることで、交渉が短期的な取引から長期的な関係構築に変わる。
洪水で従業員が無給で働いてくれた、という話が一番刺さった。普段から「全員が勝つ」関係を作っていたから、危機のときに助けてもらえた。信頼の貯金というか、関係性の貯金がものを言った。
最後の奥さんの言葉「みんなを常に愛すること、例外なく」が、結局このフレームワークの本質なのかもしれない。10分の講演なので、気になった方はぜひ。