「強い子」に育てるたった1つの公式

このTEDを一言で
子どもの不安を「取り除こう」とするほど、子どもは弱くなる。不安を感じたまま動く練習をさせると、「自分はやれる」という自信が育つ。小児不安の専門家が10年の臨床で見つけた、シンプルな公式の話。
講演者について
Kathryn Hecht(キャスリン・ヘクト)
小児不安・OCD(強迫性障害)の専門家。肩書きは「プロの勇気コーチ」。子どもに針で刺してもらったり、地下室でクモ探検をしたり、トイレの床でUNOをやったりするのが仕事。自身も2人の娘の母親。
3つのポイント
1. 親は無意識に「不安を避ける子育て」をしている
講演者がまず話したのが、3年生のサミーくんの話。冒険好きで空港のデザインに詳しい好奇心旺盛な男の子だけど、ハチが怖い。葉っぱが緑になる季節が来ると、外で甘いものは食べない、花に近づかない、家族の山小屋旅行でも室内にこもる。
親は深呼吸や気そらし、「刺されないよ」という説得——全部試したけど効果なし。サミーの返事はいつも同じ。「なんでわかるの?」
この話、子育てに限らない。「辛そうだから避けさせる」は、親として一番自然で、一番よくある間違いだと講演者は言う。ピクニックをやめる、トイレのドアを開けっぱなしにする、新しい大人の前で子どもの代わりに答える——全部「快適さのための子育て(parenting for comfort)」。
これの問題は3つ。親が疲弊する。子どもが「辛い感情=異常事態」だと学ぶ。そしてそもそも効かない。人生から不快感を消すことはできないから。
2. 「不安+勇気=自信」——不安は消さなくていい
じゃあどうするか。講演者が何百人もの子どもに使ってきた公式がこれ。
A(Anxiety:不安)+ B(Bravery:勇気)= C(Confidence:自信)
ポイントは、**不安は「問題」じゃなくて「材料」**だということ。脳科学的に、勇気が脳を書き換えるのは恐怖があるときだけ。怖いことをやらずに「大丈夫だよ」と言われても、自信はつかない。怖いまま、やる。それで初めて「自分はやれる」と思える。
サミーの場合、「ハチの写真を見る → 動画を見る → 瓶に入った死んだハチ(ダンという名前)を見る → 本物のハチ」というステップを作った。各ステップで「勇気ポイント」が貯まり、新しいレストランに行ける仕組み。
3. 親の「平気な顔」が、子どもの神経系を借りものにする
ここが一番刺さった。子どもが不安を感じると、親にも不安が伝染する。これは進化の仕組みで、子どもの涙を見ると親の脳は「火事だ!」と同じ反応をする。講演者自身も、娘の涙に「ワンオペ感情SWAT隊」になってしまうと言っていた。
でも逆もある。親が落ち着いていれば、子どもは親の神経系を「借りる」ことができる。子どもは大人の反応を見て安全かどうかを判断している(社会的参照)。だから親の仕事は、不安の波が来たときに子どもを「降ろす」ことじゃなくて、ジェットコースターの安全バーになること。
「何があっても、私はここにいる。あなたを愛してる」——その安心感のもとで、子どもは怖いことに挑戦できるようになる。
明日から使えるアクション
- 「避ける」をやめる:子どもが怖がっていることを、少しずつ体験させる機会をつくる(いきなり本番じゃなく、小さなステップから)
- 親がまず「怖いこと」をやる:サミーの親は、ハチがいるデッキで先にスイカを食べた。「大丈夫だよ」より「見ててね」のほうが効く
- 勇気を「ごほうび」にする:結果じゃなく「怖かったけどやった」というプロセスを褒める。ポイント制にするのもあり
感想
「不安を取り除く」のが親の仕事だと思ってたけど、不安は消すものじゃなくて自信の材料、という発想の転換がすごかった。
子育ての話だけど、大人にもそのまま当てはまる。プレゼンが怖い、転職が不安、新しい環境に飛び込めない——「不安がなくなってからやろう」と思ってると永遠に動けない。不安なまま動いて、「意外といけた」を積み重ねるしかない。
最後にサミーがスーツを着て堂々と立ってる写真が出てきて、会場が湧いた。17分の講演なので、気になった方はぜひ。